
許可有効期間の満了が迫っていても、まだ打てる手はあります。ただし、増資の登記完了時期や決算の締め方など、明確な条件があります。残り期間別の打ち手と、間に合うかどうかの分かれ目、そして間に合わない場合の次善策まで正直にお伝えします。
この記事の要点
- 更新申請の期限は、許可有効期間満了日の原則3か月前。過ぎると許可は失効する
- 資産要件は現預金1,500万円・基準資産2,000万円(×事業所数)などの3つ
- 不足していても、増資と月次決算とAUPの組み合わせで間に合う場合がある
- AUPは資料が揃っていれば最短数日で発行できる場合があり、短縮の鍵になる
- 失効後は新規許可の取り直しとなり、監査証明が必須で許可は3年に戻る
目次
派遣更新の期限「間に合わない」とはどういう状態か?
「間に合わない」とは、許可有効期間満了日の原則3か月前にあたる更新申請期限までに、資産要件を満たした決算書類を添えて申請できない状態のことです。期限前だが要件が未達のケースと、期限自体を過ぎたケースの2つがあり、打てる手が異なります。
前提となる資産要件は、現預金1,500万円以上、基準資産2,000万円以上(×事業所数)、基準資産が負債の7分の1以上、の3つです。直近の決算で不足している場合の詳細は、資産要件を満たせない時の3つの方法で解説しています。
期限を過ぎたらどうなる?
結論から言うと、更新できないまま許可有効期間の満了日を過ぎると許可は失効し、新規許可の取り直しになります。更新であればAUP(合意された手続)で対応できますが、新規の取り直しでは監査証明が必須です。
さらに、新規許可が下りるまでは許可の空白期間が発生し、その間は派遣事業を行えません。取り直した許可は5年ではなく3年に戻ります。この差が大きいからこそ、期限前のいまなら動く価値があります。
残り期間別に、いま何ができる?
満了日までの残り期間ごとに、打てる手を4段階で整理しました。
| 満了日までの残り | 状況 | いま打てる手 |
|---|---|---|
| 4か月超 | 申請期限まで1か月超の余裕あり | 要件チェック→不足なら増資→月次決算→AUP→申請の短縮ルートを順に実行 |
| 3〜4か月 | 申請期限の直前 | 増資の払込・登記と月次決算の準備を同時並行で圧縮し、AUPに即着手 |
| 3か月未満 | 原則の申請期限を経過 | 期限は「原則」のため、まず管轄労働局へ申請可否を確認しつつ書類を最速で準備 |
| 満了日経過 | 許可は失効 | 新規許可の取り直しへ切り替え(監査証明の準備から開始) |
増資の実行に数週間〜1か月、月次決算の締めに2〜4週間が目安です。余裕がある段階の全体像は、提出期限から逆算する標準スケジュールをご覧ください。
間に合うかどうかの分かれ目は?
分かれ目は、次の3つの条件がどこまで成立するかで概ね判断できます。
- 増資の払込と登記を今月中に完了できること。 増資は払込・登記が完了した後の月末の貸借対照表が月次決算の基準日になるため、登記が月をまたぐごとに全体が約1か月遅れます。
- 月次(中間)決算を2〜4週間で締められること。 会計データや残高資料が整理されているほど短縮でき、逆に未記帳が多いとここで詰まります。
- AUPに必要な資料をすぐ揃えられること。 資料が揃っていれば最短数日で発行できる場合があり、直前の駆け込みではこの速さが効きます。
3つがすべて成立すれば、残り3〜4か月からでも申請に届く可能性は十分あります。増資額の考え方など要件充足の選択肢は、資産要件を満たせない時の3つの方法で確認できます。
どうしても間に合わないのはどんなケースか?
正直にお伝えすると、間に合わない場合もあります。典型的なのは次の3つのケースです。
- 満了日をすでに過ぎており、許可が失効しているケース
- 増資の払込資金の目途が立たず、残り期間内に登記完了月の月末を迎えられないケース
- 会計記録の未整備が大きく、月次決算とAUPに必要な資料を期限内に揃えられないケース
この場合の次善策は、新規許可の取り直しを最短で進めることです。段取りは大きく3ステップに分かれます。
- 空白期間中は派遣事業を行えないため、進行中の派遣契約への影響を整理し、関係先への対応方針を決める
- 資産要件を満たす決算を固め、新規申請に必須の監査証明の準備を進める
- 新規許可(3年)を申請し、許可取得後に5年更新のサイクルへ戻していく
失うものを最小化する動き方は状況によって変わるため、この段階でも早めの相談をおすすめします。
FAQ(よくあるご質問)
申請期限(満了3か月前)を数日過ぎてしまいました。もう無理でしょうか?
A. 3か月前という期限は「原則」のため、まず管轄労働局に申請可否を確認してください。受理されるかどうかは労働局の判断と個別の状況によります。当センターでも残り期間と決算状況から見立てをお伝えできます。
現預金が1,500万円に足りません。今から増資して間に合いますか?
A. 増資は払込・登記完了後の月末の貸借対照表が月次決算の基準日になるため、今月中に登記まで完了できるかが最大の分かれ目です。残り期間によっては間に合わない場合もあるので、着手前に工程表で確認することをおすすめします。
監査証明とAUP(合意された手続)はどちらが必要ですか?
A. 更新申請であればAUPで対応でき、資料が揃っていれば最短数日で発行できる場合があります。一方、期限徒過後の新規取り直しでは監査証明が必須となり、手間も期間も増えます。
まだ依頼するか決めていませんが、相談だけでも可能ですか?
A. 可能です。残り期間・不足額・決算状況を伺ったうえでの間に合うかどうかの見立てと工程表のご提示までは無料です。
まとめ
最後に、要点を4つに絞って振り返ります。
- 更新申請の期限は許可有効期間満了日の原則3か月前で、満了日を過ぎると許可は失効する
- 失効後は新規取り直し(監査証明必須・空白期間発生・3年許可)となり、負担が大きく増える
- 増資の登記完了月・月次決算2〜4週間・AUPの資料準備の3条件が揃えば、残り3〜4か月からでも届く可能性がある
- 間に合わない場合もあるため、まず現状を出して見立てを取ることが最初の一手になる
この記事の著者
公認会計士・税理士 田中伸一(田中公認会計士事務所/派遣事業更新センター)
日本公認会計士協会 専門業務実務指針4450に準拠した、労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可申請に係る監査証明・合意された手続業務を専門とする。支援実績200件超、労働局での不受理ゼロ・更新率100%(当事務所受任案件の実績)。※これまでの実績であり、将来の結果を保証するものではありません。派遣専門の公認会計士3名が常駐。
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