
労働者派遣事業の許可更新では、申請様式5点に決算書・納税証明書などを加えた最大17項目の書類を、許可有効期間満了日の原則3か月前までに管轄労働局へ提出します。期限を過ぎた申請は受け付けられないため、書類の抜け漏れ確認は早めが肝心です。この記事では、厚生労働省・労働局の公式資料で確認できる必要書類だけをチェックリスト化し、派遣専門の公認会計士が決算書・資産要件まわりの落とし穴まで解説します。
この記事の要点
- 更新の提出書類は申請様式5点+添付書類など最大17項目(労働局公表リスト基準)
- 提出期限は許可有効期間満了日の原則3か月前で、申請日の超過は認められない
- 更新手数料は収入印紙5万5,000円×派遣事業を行う事業所数分が必要
- 資産要件は基準資産額2,000万円以上・現預金1,500万円以上など3つで審査される
- 直近決算で資産要件を満たせなくても、増資+会計士のAUP等で更新できる余地がある
目次
派遣事業更新の必要書類とは?
派遣事業更新の必要書類とは、労働者派遣事業の許可有効期間(新規3年・更新後5年)を更新するために、満了日の3か月前までに管轄労働局へ提出する書類一式のことです。様式で定められた申請書類のほか、決算書・納税証明書など財産的基礎(資産要件)を証明する書類が中心になります。
この記事の一覧は、厚生労働省の「労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-」と労働局の公表資料に基づいて整理しています。部数や細かい運用は労働局ごとに異なる場合があるため、実際の提出前には必ず管轄労働局の最新案内で確認してください。
更新申請に必要な書類は?【全17項目チェックリスト】
兵庫労働局が公表する法人向けの更新申請必要書類一覧(PDF)では、提出書類等は全17項目とされています。ここでは「申請様式」「添付書類」「変更がなければ提出不要の書類」「手数料ほか」の4グループに分けて整理します。なお、未届けの変更事項(役員変更・住所変更など)がある場合は、更新申請より先に変更届の手続きが必要です。
申請様式(5点)
まず、すべての申請者が作成する様式は次の5点です。様式の最新版は厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領・様式ページからダウンロードできます。
- 労働者派遣事業許可・許可有効期間更新申請書(様式第1号)。更新申請の本体となる書類で、正本1部とコピー2部を提出します。
- 労働者派遣事業計画書(様式第3号)。派遣を行う事業所ごとに作成します。
- キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)。教育訓練計画やキャリアコンサルティングの体制を記載し、事業所ごとに作成します。
- 雇用保険等の被保険者資格取得の状況報告書(様式第3号-3)。派遣労働者に雇用保険・社会保険の未加入者がいる場合のみ提出します。
- 自己チェックシート(様式第15号)。許可基準の充足を自己点検した結果を提出します。
添付書類(4点)
次に、証明書・決算関係の添付書類は次の4点です。決算・税務関係はいずれも直近の事業年度分に限られます。
- 派遣元責任者講習受講証明書の写し。事業所ごとに選任した派遣元責任者のもので、受講日が許可有効期間満了日前3年以内のものに限られます。
- 法人税の確定申告書(別表1・別表4)の写し。税務署の受付印があるもの、電子申告の場合はe-Tax受信通知「メール詳細」を印刷したものを添付します。
- 納税証明書「その2」(法人税の所得金額の証明書)。税務署で取得する証明書で、正本の提出が必要です。
- 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書。税務署に提出した決算書一式の写しで、資産要件の審査資料になります。
変更がなければ提出不要の書類(6点)
次の6点は、許可時や過去の届出から変更がない場合は提出不要です。変更があった項目だけ最新版を用意します。
- 定款。目的や商号に変更がある場合は最新のものを提出します。
- 法人の登記事項証明書(履歴事項証明書)。正本の提出が必要です。
- 個人情報適正管理規程。事業所ごとに作成したものを提出します。
- キャリア形成を念頭においた派遣先の提供のための事務手引・マニュアル等。事業所ごとに作成したものを提出します。
- 就業規則または労働契約書の写し。教育訓練中の賃金支払い、派遣契約終了のみを理由とする解雇の禁止、休業手当の支払いの3箇所を含み、労基署の受付印があるものに限られます。
- 企業パンフレット等事業内容が確認できるもの。作成していない場合は不要です。
手数料ほか(2点)
最後に、書類以外で準備するものが2点あります。
- 手数料(収入印紙)。5万5,000円×派遣事業を行う事業所数分を、窓口での書類チェック後に申請書正本へ貼付します。
- その他の補足資料。資産要件の軽減措置(当分の間の措置)で申請する場合は誓約書(様式第16号)などの追加様式が必要です。適用条件は管轄労働局に確認してください。
提出期限はいつまで?手数料はいくら?
提出期限は、許可有効期間が満了する日の原則3か月前までです。申請日の超過は1日でも認められないため、そこから逆算した準備が必要になります。納税証明書や登記事項証明書の取得、就業規則の整備には想像以上に時間がかかるので、提出期限から逆算するスケジュールを参考に、満了日の5〜6か月前には着手するのが現実的です。
手数料は収入印紙5万5,000円×事業所数分です(兵庫労働局公表の必要書類一覧より)。管轄が東京の場合の窓口・案内は東京労働局の労働者派遣事業関係ページで確認できます。
資産要件はどの書類で審査される?
更新審査の最大の関門が資産要件で、提出した直近事業年度の貸借対照表を基に判定されます。1事業所の場合、要件は次の3つです(事業所数に応じて基準額は増加します)。
- 基準資産額(資産-負債を基礎に算定)が2,000万円以上
- 現金・預金が1,500万円以上
- 基準資産額が負債総額の7分の1以上
計算の詳しい手順は基準資産額の計算方法(図解)で解説しています。直近決算で満たせない場合も、増資したうえで月次決算・中間決算を組み、公認会計士の証明を受ければ更新できる余地があります。このとき必要な証明は、新規と更新で次のように異なります。
| 申請種別 | 必要な公認会計士の証明 |
|---|---|
| 新規許可 | 監査証明が必須 |
| 許可の更新 | 監査証明または合意された手続(AUP)で可 |
更新ならAUPで足りるため、フルの監査証明より短期間・低コストで対応できるケースが多いのが実務上のポイントです。具体的な選択肢は資産要件を満たせない時の3つの方法にまとめています。
会計士が見た「決算書・資産要件」5つの落とし穴
当事務所が更新支援の現場で実際に目にする、決算書・資産要件まわりのつまずきは次の5つです。
- 「直近決算」が申請のタイミングで入れ替わる。審査対象は申請時点の最新確定決算です。決算期をまたいでから申請すると判定に使う決算書が新しい期のものに変わるため、業績が悪化した期が確定する前に申請を済ませるか、逆に回復後の決算を待つか、決算期と申請時期の設計が結果を左右します。
- 借入金で現預金を積んでも基準資産額は増えない。借入は資産と負債が同額で増えるため基準資産額に寄与せず、むしろ「基準資産額≧負債総額÷7」の要件を悪化させます。根本的な解決は増資です。
- 帳簿上の純資産と「基準資産額」は一致しないことがある。繰延資産や営業権は基準資産額の算定上控除されるため、純資産が2,000万円をわずかに超えている会社は要注意です(算定基準は厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領に基づきます)。
- 電子申告の「受信通知」添付漏れと納税証明書の取り違え。e-Taxの場合は受信通知「メール詳細」の印刷が受付印の代わりに必要です。また納税証明書は「その1(納税額)」ではなく「その2(所得金額)」が正しい種類です。
- 株主資本等変動計算書の添付漏れ。貸借対照表と損益計算書だけでは不足で、株主資本等変動計算書まで含めた税務署提出版の一式が求められます。増資をした期は特に整合性を確認されます。
いずれも書類の形式不備にとどまらず、気づいた時期が遅いほど打てる手が減っていくのが共通点です。決算の1つ前の月次段階で資産要件を試算しておくと、増資やAUPといった選択肢を落ち着いて検討できます。
FAQ(よくあるご質問)
更新申請はいつまでに出せばよいですか?
A. 許可有効期間が満了する日の原則3か月前までに、事業主管轄の労働局へ提出します。期限を過ぎた申請は認められないため、納税証明書などの取得期間も見込んで5〜6か月前から準備を始めるのが安全です。受付開始時期の運用は労働局により異なるので、管轄労働局にご確認ください。
直近決算が債務超過でも更新できますか?
A. 直近決算のままでは資産要件を満たせませんが、増資を行ったうえで月次決算または中間決算を作成し、公認会計士の監査証明または合意された手続(AUP)による確認を受ければ、更新申請できる可能性があります。更新の場合はAUPで対応できるため、まず貸借対照表をもとに不足額を把握することが第一歩です。
更新の手数料はいくらかかりますか?
A. 収入印紙で5万5,000円×派遣事業を行う事業所数分です。窓口で書類のチェックを受けた後に、申請書(様式第1号)の正本に貼付します。
更新後の許可有効期間は何年ですか?
A. 新規許可の有効期間は3年、更新後の有効期間は5年です(厚生労働省の許可・更新等手続マニュアルより)。更新を重ねるごとに5年ずつ延長されます。
まとめ
- 更新の必要書類は申請様式5点+添付書類4点+変更時のみの書類6点+手数料ほか2点の最大17項目
- 提出期限は許可有効期間満了日の原則3か月前で、超過は認められない
- 手数料は収入印紙5万5,000円×事業所数分
- 資産要件は直近決算の貸借対照表で審査され、基準資産額2,000万円以上・現預金1,500万円以上・基準資産額≧負債総額÷7の3つ
- 満たせない場合は増資+月次・中間決算+公認会計士の監査証明またはAUP(更新はAUP可)という道筋がある
- 様式・運用は変わり得るため、最終確認は必ず管轄労働局の最新案内で行う
この記事の著者
公認会計士・税理士 田中伸一(田中公認会計士事務所/派遣事業更新センター)
日本公認会計士協会 専門業務実務指針4450に準拠した、労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可申請に係る監査証明・合意された手続業務を専門とする。支援実績200件超、労働局での不受理ゼロ・更新率100%(当事務所受任案件の実績)。※これまでの実績であり、将来の結果を保証するものではありません。派遣専門の公認会計士3名が常駐。
公開日:2026年7月18日
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