
(最終更新:2026年7月17日)
この記事の要点
- 監査証明・AUPはどちらに依頼しても可、担い手の資格は同じ「公認会計士」
- 費用相場は15〜30万円、監査法人は高め・会計士事務所は下限側に収まりやすい傾向
- 監査法人は大規模・グループ・上場(準備)企業、会計士事務所は中小規模の会社向き
- 独立性の要件により、顧問の公認会計士には監査証明もAUPも依頼不可
- 依頼前チェックは資格・独立性・派遣実績・対応手続・期限・費用の6点で確認できる
労働者派遣事業や有料職業紹介事業の許可申請で監査証明(または合意された手続=AUP)が必要になったとき、最初に迷うのが「監査法人に頼むべきか、個人の公認会計士事務所でよいのか」という点です。このページでは、両者の違いを表で整理し、自社に合う依頼先を選ぶためのチェックリストをご用意しました。
目次
そもそも監査法人と会計士事務所、どちらでもいいのですか?
監査証明・AUP(合意された手続)の依頼先とは、公認会計士または監査法人のことです。担い手の資格はどちらも同じ公認会計士で、報告書の効力に制度上の差はありません。違いは費用感・スピード・小回りといった実務面に現れ、会社の規模と状況によって向き不向きが分かれます。
はい、どちらでも構いません。
派遣・職業紹介の許可申請で使う監査証明やAUP(合意された手続)の実施主体は、公認会計士または監査法人とされています。個人の公認会計士事務所が発行した報告書だから審査で不利になる、監査法人だから有利になる、ということはありません。労働局が見るのは、報告書が所定の手続(日本公認会計士協会の専門業務実務指針4450など)に沿って適切に作成されているかどうかです。
そもそも監査法人とは、公認会計士が集まって設立する法人で、主に上場企業などの法定監査を担う組織です。一方、会計士事務所は公認会計士が個人(または少人数)で運営する事務所です。担い手の資格はどちらも同じ「公認会計士」であり、違いが出るのは法律上の効力ではなく、費用感・スピード・小回りといった実務面です。
監査法人と会計士事務所、実務面の違いは?【比較表】
| 比較項目 | 監査法人 | 会計士事務所(個人・小規模) |
|---|---|---|
| 報告書の効力 | 同じ(制度上の差はなし) | 同じ(制度上の差はなし) |
| 費用感 | 相対的に高めになりやすい(組織的な審査体制・管理コストが上乗せされる傾向) | 相対的に抑えやすい(相場15〜30万円のうち下限側に収まりやすい) |
| スピード | 受嘱判断や社内審査に段階があり、着手まで時間がかかることがある | 意思決定が速く、期限が迫った案件にも対応しやすい |
| 小回り | 担当者が案件ごとに変わることがある | 所長会計士が一貫して担当することが多く、連絡が直通 |
| 得意な会社規模 | 大規模・グループ会社・上場(準備)企業 | 中小規模の派遣会社・職業紹介会社 |
| 派遣業務の経験 | 法人により差が大きい(法定監査が主業務のため、派遣の許可審査業務は経験が少ない場合も) | 事務所により差が大きい(派遣専門をうたう事務所もある) |
※費用・日数は一般的な目安です。会社規模・事業所数・資料の整備状況で変動します(相場の詳細は費用相場の記事をご覧ください)。
表のとおり、「どちらが上」という話ではなく、会社の規模と状況によって向き不向きが分かれるというのが実際のところです。
どんな会社なら監査法人が向いていますか?
次のようなケースでは、監査法人への依頼が候補になります。
- すでに監査法人の法定監査を受けている(上場企業・その子会社など)——ただし後述のとおり、その会社の監査をしている法人には頼めない場合があるため注意が必要です。
- グループ全体で複数社の申請をまとめて進めたいなど、組織的な対応力が必要な場合。
- 社内の稟議上、組織としての監査法人名義が求められる場合。
一方で、費用は高めになりやすく、着手までの手続にも時間がかかることがあります。更新期限まで余裕がないケースでは、この点がネックになることがあります。
どんな会社なら会計士事務所が向いていますか?
次のようなケースでは、会計士事務所が現実的な選択肢になります。
- 中小規模の派遣会社・職業紹介会社で、費用をできるだけ抑えたい。
- 提出期限が迫っており、すぐに着手してほしい。
- 経理担当が少人数(または社長兼務)で、資料の準備段階から相談しながら進めたい。
会計士事務所を選ぶ場合に確認したいのは、派遣・職業紹介の許可審査業務の経験があるかです。監査証明やAUPは一般の税務顧問業務とは別の手続なので、「派遣の監査証明(またはAUP)の実績は何件くらいありますか」と率直に聞いてみるのが確実です。
顧問の会計士・税理士に頼めないのはなぜですか?
ここが最も多い誤解ポイントです。ふだんお願いしている顧問の公認会計士には、監査証明もAUPも依頼できません。
監査証明やAUPは、会社が作った決算書を「外部の目」で確かめる手続です。その会社の記帳や決算書の作成に関与している会計士が自ら確かめたのでは、自分の仕事を自分でチェックすることになってしまうため、独立性の要件により実施できないとされています。
つまりどの会社も、ふだんの顧問とは別に、独立した公認会計士(または監査法人)を探す必要があるということです。「顧問の先生に頼めばすぐでは?」と考えて直前に断られ、期限ぎりぎりで慌てるケースが実務では少なくありません。なお、顧問税理士が公認会計士資格を持っていない場合は、そもそも監査証明・AUPを実施できません(税理士のみの資格では不可)。
依頼先を選ぶときのチェックリストは?
依頼前に、次の6点を確認しておくと失敗が少なくなります。
- 公認会計士(または監査法人)か——税理士のみの資格では実施できません。
- 自社の顧問ではない独立した立場か——記帳・決算・税務申告に関与していないこと。
- 派遣・職業紹介の許可審査業務の実績があるか——件数を具体的に聞いてみる。
- 自社に必要な手続(監査証明かAUPか)に対応しているか——新規は監査証明が必須、更新はAUPでも可です(違いは監査証明とAUPの比較記事へ)。
- 提出期限に間に合うスケジュールを示してくれるか——着手前に日程表が出てくるかどうか。
- 見積りの内訳が明確か——事業所数や資料の状態による追加費用の条件まで確認。
とくに3と5は、期限のある許可申請では効いてきます。資産要件ぎりぎりで手続の要否自体を迷っている場合は、資産要件の記事も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 個人の会計士事務所の報告書だと、労働局の審査で不利になりませんか?
なりません。制度上、監査証明・AUPの実施主体は「公認会計士または監査法人」であり、どちらの報告書も同じように扱われます。審査で見られるのは発行元の規模ではなく、所定の手続に沿って適切に作成されているかどうかです。
Q2. 大手の監査法人に頼んだほうが安心では?
規模の大きさと、派遣の許可審査業務への慣れは別問題です。監査法人の主業務は上場企業などの法定監査であり、派遣の監査証明・AUPの経験が豊富とは限りません。安心材料にすべきは「この業務の実績件数」で、それは事務所・法人の規模を問わず確認できます。
Q3. 監査法人と会計士事務所で費用はどのくらい違いますか?
一般的な相場は15〜30万円程度で、監査法人は組織的な審査体制のぶん上限側、会計士事務所は下限側に収まりやすい傾向があります。ただし会社規模や資料の整備状況による変動のほうが大きいので、複数から見積りを取って比べるのが確実です。
Q4. 顧問の会計士がダメなら、顧問の「知り合いの会計士」ならいいですか?
その会計士が自社の記帳・決算・税務に関与していなければ、依頼すること自体は可能です。ただし紹介であっても、派遣の許可審査業務の経験があるかは別途確認してください。
Q5. 更新申請でも、監査法人か会計士事務所かで使える手続が変わりますか?
変わりません。新規申請は監査証明が必須、更新申請はAUPでも可という区分は、依頼先が監査法人か会計士事務所かに関係なく同じです。
監修・執筆
公認会計士・税理士 田中伸一(田中公認会計士事務所/派遣事業更新センター)
労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可申請に係る監査証明・合意された手続の実績200件超。労働局への提出書類の不受理ゼロ。全国オンライン対応。
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当センターは派遣・職業紹介の許可申請に特化した会計士事務所です。実績200件超・全国オンライン対応・11万円(税込)〜(※事業所数1・総資産2,500万円以内の事業者様の場合。規模に応じて個別お見積り)でお受けしています。依頼先を迷っている段階のご相談でも構いません。
公開日:2026年7月18日
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