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資産要件シミュレーション

2014-05-04(最終更新:2026年8月19日)
資産要件シミュレーション

派遣事業の資産要件は、①現金・預金1,500万円以上、②基準資産額2,000万円以上、③基準資産額が負債総額の7分の1以上、という3つの数値基準で判定されます。(①の裏付けに使う銀行の残高証明書の取り方もあわせてご覧ください。)この記事のシミュレーション表に、直近の決算書(貸借対照表)の数字を当てはめれば、3要件を満たしているかどうかを今すぐご自身で計算できます。要件に届いていない場合も、増資などで財務を改善して更新を目指せるケースが実務上多くあります。

この記事の要点

  • 資産要件は3つ:現預金1,500万円・基準資産2,000万円・基準資産≧負債÷7
  • 事業所が2つある場合、①②の基準額は2倍、③は事業所数を掛けない
  • 有料職業紹介事業は基準資産500万円×事業所数など別の基準で判定される
  • 決算書の数字を当てはめるだけの手計算シミュレーション表をこの記事で公開
  • 要件に届かなくても、増資などで改善し更新を目指せる道が実務上ある

基準資産額シミュレーションとは?

基準資産額シミュレーションとは、派遣・有料職業紹介事業の許可更新に必要な資産要件(現預金・基準資産額・負債とのバランスという3つの基準)を、実際の決算書の数字を当てはめて自分で計算する手計算の確認作業です。正式な証明ではありませんが、要件に届いているかどうかを事前に把握するための簡易チェックとして使えます。

この3要件は、労働局が労働者派遣事業の許可・更新の審査で実際に確認している基準です。厚生労働省「労働者派遣事業 許可・更新等手続マニュアル」でも、資産要件を含む許可基準が示されています。決算が締まるたびにご自身で数字を当てはめて確認しておくと、不足に早めに気づくことができます。

派遣事業の資産要件は、どんな計算式で決まるのか?

労働者派遣事業の資産要件は、①現金・預金1,500万円以上、②基準資産額2,000万円以上、③基準資産額が負債総額の7分の1以上(基準資産額≧負債総額÷7)、という3つの式で判定されます。1つでも欠けると、そのままでは許可・更新が認められません。

基準資産額は「資産総額-負債総額-(繰延資産+営業権)」で計算します。純資産の額とほぼ一致しますが、繰延資産や営業権(のれん)が決算書にある場合は、その分を差し引く点が異なります。3つの式を一覧にすると、次のとおりです。

要件 計算式 基準(事業所1つの場合)
①現預金要件 現金・預金の額 1,500万円以上
②基準資産要件 資産総額-負債総額-(繰延資産+営業権) 2,000万円以上
③÷7要件 基準資産額 ≧ 負債総額 ÷ 7 左辺が右辺以上

【シミュレーション表】決算書の数字を当てはめて計算してみよう

お手元に直近の貸借対照表があれば、次の表に数字を書き写すだけで3要件の判定ができます。まずは4つの数字を貸借対照表から拾ってください

記号 確認する項目 貸借対照表のどこを見るか あなたの数字(万円)
a 資産総額 資産の部合計  
b 負債総額 負債の部合計  
c 繰延資産+営業権(のれん) 該当科目(なければ0)  
d 現金・預金 流動資産の「現金及び預金」  

数字を書き写したら、次の手順で3要件を判定します。

  1. a(資産総額)からb(負債総額)とc(繰延資産+営業権)を引き、基準資産額を求める(a-b-c)
  2. 求めた基準資産額が2,000万円以上あるか確認する(②基準資産要件)
  3. d(現金・預金)が1,500万円以上あるか確認する(①現預金要件)
  4. 基準資産額が「b(負債総額)÷7」以上あるか確認する(③÷7要件)

たとえば、資産総額8,000万円・負債総額6,500万円・繰延資産等0円・現金預金1,800万円という決算書であれば、基準資産額は8,000-6,500-0=1,500万円です。①現預金1,800万円はクリアしていますが、②基準資産額は2,000万円に届いていません。③は1,500万円≧6,500万円÷7(約929万円)でクリアしていても、②が未達であれば要件全体は満たせません。3要件は必ずセットで確認する必要があります。

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【自動計算】数字を入力するだけで判定します

上のシミュレーション表と同じ考え方を、入力するだけで自動計算するツールです。手計算の検算にもお使いいただけます。

事業所が2つ以上ある場合、計算はどう変わるのか?

事業所を複数お持ちの場合、①現預金要件と②基準資産要件は事業所数に応じて倍増しますが、③÷7要件は事業所数を掛けません。負債総額とのバランスを見る基準のため、事業所数に連動しない仕組みになっています。

事業所数 ①現預金要件 ②基準資産要件 ③÷7要件
1つ 1,500万円以上 2,000万円以上 事業所数に関わらず「基準資産額≧負債総額÷7」のまま
2つ 3,000万円以上 4,000万円以上
3つ 4,500万円以上 6,000万円以上

事業所数は、許可申請書に記載する派遣元事業所の数で数えます。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」でも、事業所数に応じた資産要件の考え方が示されています。本店以外に支店・営業所がある場合は、その数も含めて計算する必要があります。事業所を増やす予定がある会社さまは、増設後の事業所数で①②を計算し直しておくと、後から慌てずに済みます。

小規模特例(配慮措置)は使えるか?

1つの事業所のみで、常時雇用する派遣労働者が10人以下の中小事業主については、資産要件を緩和する「小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置」が設けられています。ただし対象は限定的で、既に労働者派遣事業の許可を受けている事業者のみが対象です。

本則(通常) 小規模特例
①現預金要件 1,500万円以上 800万円以上
②基準資産要件 2,000万円以上 1,000万円以上
③÷7要件 基準資産額≧負債総額÷7 同左(変更なし)

この特例は、常時雇用する派遣労働者が10人以下・事業所1つという条件に加えて、これから新規に労働者派遣事業を始める事業主は対象外という制限があります。労働局の資料でも「当分の間の措置」と位置づけられており、将来的に見直される可能性がある点にご留意ください。
出典:静岡労働局「小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置」

ご自身が対象になるかどうかの判断を含め、上の自動計算ツールの「小規模特例」チェックボックスで、本則と特例の両方の結果をあわせて確認できます。要件の詳細や最新の運用は、念のため管轄労働局にもご確認ください。

有料職業紹介事業の基準資産額はいくら必要か?

有料職業紹介事業には、労働者派遣事業とは別の資産要件があります。基準資産額は500万円×事業所数、現金・預金は150万円×事業所数が目安で、派遣にある③÷7要件はありません。

労働者派遣事業 有料職業紹介事業
基準資産 2,000万円以上×事業所数 500万円以上×事業所数
現預金 1,500万円以上×事業所数 150万円以上×事業所数
÷7要件 あり なし

派遣と有料職業紹介の両方の許可をお持ちの会社さまは、それぞれ別枠で資産要件を判定される点にご注意ください。有料職業紹介の資産要件と監査証明の詳しい考え方は、別記事「有料職業紹介の監査証明・資産要件」で解説しています。

計算した結果、要件に届いていなかったらどうすればよいか?

この手計算で要件に届いていないと分かっても、更新を諦める必要はありません。増資などで財務を改善し、改善後の月次・中間決算に公認会計士の監査証明または合意された手続(AUP)を受ければ、その数値で資産要件を判定してもらう道が実務上認められています。

日本公認会計士協会「専門業務実務指針4450(労働者派遣事業等の許可申請に係る合意された手続業務等)」に沿って、月次決算・中間決算の数値により資産要件の充足を確認する手続が確立されています。

不足を埋める具体的な方法(増資・DES・負債圧縮など)と費用・スケジュールの目安は、別記事「基準資産2,000万円に届かない場合の3つの現実的な方法」で詳しく解説しています。提出期限から逆算していつ何を始めるべきかは「提出期限からの逆算スケジュール」もあわせてご覧ください。ご自身での計算に不安がある場合は、決算書をお送りいただければ無料で診断いたします。

FAQ(よくあるご質問)

Q1. この表で計算した結果は、そのまま労働局に提出できますか?

いいえ、提出はできません。この表はあくまでご自身での事前チェック用です。正式な更新申請には、直近決算(または月次・中間決算)に基づく公認会計士の監査証明や合意された手続実施結果報告書が必要になります。まずは要件に届いているかどうかの目安として活用してください。

Q2. 「繰延資産」「営業権」が決算書に見当たりません。どう計算すればよいですか?

該当する科目が貸借対照表になければ、c(繰延資産+営業権)は0として計算して問題ありません。多くの中小企業では該当科目自体がなく、基準資産額が純資産の額とほぼ一致するケースが一般的です。

Q3. 基準資産額と純資産は同じものですか?

近い概念ですが同じではありません。基準資産額は「資産総額-負債総額-(繰延資産+営業権)」で計算するため、繰延資産や営業権(のれん)がある会社では、純資産の額より基準資産額のほうが小さくなります。両方の科目がなければ、結果的に純資産の額と一致します。

Q4. 計算した基準資産額が2,000万円にわずかに届きませんでした。今からでも間に合いますか?

間に合う場合があります。増資などで純資産を積み増し、その後の月次・中間決算に公認会計士の証明を受ければ、改善後の数値で判定を受けられるのが実務上の取り扱いです。ただし増資の登記から証明の取得まで一定の日数がかかるため、提出期限までの残り期間を早めに確認することをおすすめします。

Q5. 有料職業紹介と労働者派遣、両方の許可を持っている場合はどう計算しますか?

それぞれ別枠で計算します。労働者派遣事業は基準資産2,000万円以上×事業所数などの基準、有料職業紹介事業は基準資産500万円以上×事業所数などの基準で、個別に3要件(有料職業紹介は2要件)を満たしているかを確認する必要があります。

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決算書の数字を当てはめてみて不安が残る場合や、計算そのものが難しい場合は、決算書をお送りいただければ無料で診断いたします。

この記事の著者:公認会計士・税理士 田中伸一(田中公認会計士事務所/派遣事業更新センター)

日本公認会計士協会 専門業務実務指針4450に準拠した、労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可申請に係る監査証明・合意された手続業務を専門とする。支援実績200件超、更新率100%(発行済み案件で不受理等の連絡を受けた事例なし・当センター調べ)。※これまでの実績であり、将来の結果を保証するものではありません。詳しくは田中伸一のプロフィールをご覧ください。

最終更新日:2026年7月19日

初回公開:2014年5月/最終更新日:2026年7月19日

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